東京高等裁判所 昭和29年(ネ)1749号 判決
(一) 証拠を総合すれば、被控訴人は運送及び運送取扱を業とする会社であるところ、その主張の第一の各貨物につき到達地運送取扱人として、その主張のとおり運送の取次をなし、その主張のとおりの扱料、積卸料等の費用を支出し、荷受人の支払うべき先払運賃を立替え支払い、右貨物を荷受人である控訴人に引渡したことを認定することができる。もつとも右甲第一、第三号証(貨物運賃請求書控)の宛名は「清水又左衛門商店殿」となつていて、成立に争のない乙第一、第二号証当審証人清水喜代子の証言並びに原審及び当審における控訴人本人尋問の結果によれば、その頃東京都豊島区雑司谷七丁目九百五十二番地には合資会社清水又左衛門商店東京営業所又び株式会社清水又左衛門商店等の会社の営業所があつて、いずれも薪炭の販売業を営んでいて、右宛名はこれらの会社を表示するものと見られないでもないことが認められるけれども、(中略)証拠を総合すれば、右両会社の営業所は当時の控訴人の住所と場所を同じくし、両会社の営業は控訴人、その家族及び雇人によつてなされ、名称は相互に紛わしく、帳簿もなく、営業種目も営業の場所も従業員の構成も截然と区別されていないため個々の取引の主体が個人か会社か、会社としても合資会社と株式会社のうちいずれか等の点は、その時その時の控訴人の主観的認識は別として、外部の第三者からこれを確認することが容易でないことは勿論、従業員自身すら後にはこれを明確にすることができなかつたような状態であり、取引先から控訴人個人宛に送付された貨物があるときは、控訴人個人においてこれを受領し、これに対して或は「清水又左衛門」名義の預り証を発行することもあり、或は「清水又左衛門商店」名義の預り証を発行することもあつて、「清水又左衛門商店」は必ず会社の表示であつて控訴人個人の表示ではないと決つていたわけでもなく、又控訴人個人が取引の相手方となることを常に拒否していたわけでもないことが認められるから、前記甲第一、第三号証の宛名の表示が「清水又左衛門商店」とあることによつては前記取引における荷受人が控訴人個人であるとの前認定を左右するに足りない。
(二) 証拠を総合すれば、被控訴人がその主張の第二列挙の各貨物につき到達地池袋駅における運送取扱人となり右各貨物については貨物引換証が発行されているのにかかわらず、荷受人である控訴人の要請によつて、貨物引換証は後に引渡を受ける約定の下に、これとの引換によらないで、それぞれ被控訴人主張の日に各貨物を控訴人に引渡したところ、その後控訴人は約に反して貨物引換証の引渡をしなかつたので、被控訴人は、荷送人等の要求によりやむなく、荷送人等が貨物の上に有した権利を喪失したことによる損害の賠償として、各貨物引換証に表示されていた被控訴人主張の金員を荷送人等に支払つたことが認定できる。(中略)しかして被控訴人が右のように各荷送人に金員を支払うことによつて被つた同額の損害は、控訴人の被控訴人に対する右貨物引換証引渡義務の不履行により通常生ずべき損害であるから、控訴人は被控訴人に対しこれが賠償の責に任じなければならない。
(斎藤 坂本 小沢)